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Interview - Hannah Keefe

Magic on Metals 2018.11.01

ハンナ・キーフのジュエリーはオリジナリティーに溢れ、そのフォルムに辿りついた経緯も含めてどのような技法で作られているのか謎に満ちています。彼女は、チェーンという形の定まらない素材をまるで魔術師のように扱い、動きのある幾何学模様を浮かび上がらせます。現在ロサンゼルスに暮らしている彼女に、そのミステリアスなジュエリーの秘密や彼女自身について伺いました。


__こんにちは、ハンナ。

こんにちは。

__まずはあなたがどんな暮らしをしているのか、聞かせてください。今のお住まいは?

Altadenaという、East Los Angelesの近くに住んでいるわ。大きな山の麓にあって、都会から離れた静かで美しくてとてもピースフルなところ。6か月前に越してきたばかりなのだけど、ハイキングやサイクリングなどのアクティビティににぴったりなところよ。

__引っ越して間もないですが、もうお気に入りの場所は見つけました?

そうね、家から少し歩いたところにMt.Wilsonの天体観測所があるの。他にはHuntington Libraryという、小さな美術館と植物園が一緒になっているところがあるからそこも気に入っているわ。サボテンのガーデンが本当に素晴らしいの。その後にはPie'n Burgerでオールド・スクールなクラシックバーガーと特大のパイで締めくくるのがお気に入りのコース。そのあとの昼寝は必須ね。

__サボテンのガーデンは面白そうですね。植物は好きなんですか?

ええ。実は、ホヤ(蔓性植物)とリプサリス(葦サボテン)を収集しているの。とても多種でどれも少しずつ違うのよ。世界中の栽培者からメールオーダーで送ってもらったものを、挿し木にして室内で育てているわ。蔦がたくさん伸びるところとか、茎がたくさんぶら下がっているように成長するところとか、どこか私のジュエリーに通じるところがあるような気がするの。自然や植物がわたしのインスピレーション源なのよ。


__スタジオではどんな風に一日を過ごしていますか?

スタジオが家の隣だからほんの数歩あるくだけで自分の世界に入れるの。私の犬も一緒に連れて来るのだけど仕事の間中そばで寝ているわ。ほとんど毎日が作業モードで、ジュエリーを作ったり、オーダーの処理をしたりといった感じね。あとは、たまに”Permanent Bracelets"のアポイントで来客があるわね。

__その"Permanent Bracelet”というのは?面白そうですね。

サイドプロジェクト的にやっているのだけど、細いゴールドかシルバーのワイヤーをその人の手首のサイズに合わせて、その場で私がロウ付けするっていうプロジェクト。トーチを使って。きつすぎず、でも手からは落ちないサイズでね。カットしない限り取れないから”Permanent"というわけ。もう何年も続けているけれどこのプロジェクトを通して面白い出会いがたくさんあったわ。

__ジュエリーを作り始めた経緯を聞かせてください。

昔から自分のジュエリーを手作りするのが好きで、金属を扱うことを覚える前は色々な物に糸を通してどうにか身に着けられる形にしたりしていたわ。19才の時、友達とのロードトリップで、セントラルメキシコにあるSan Miguel De'Allende という、伝統工芸を教えている職人がたくさんいるところに行ったの。その道中で南西部やメキシコで見たターコイズのジュエリーの魅力にすっかり取りつかれてしまって、圧倒されたの。「私もこんなものを作りたい」っていう勢いのまま、メキシコに到着するなりシルバー彫金のレッスンを受けたのが最初。そのあとすぐボストンのアートスクールに入って彫金のコースを専攻したの。

__そして今ジュエリーデザイナーとして活躍しているわけですね。

この仕事が大好きよ。日々好きな仕事をして生活していけるなんて夢みたい。火を扱うのがとても好きなの。

__では、ジュエリーについて詳しく聞かせてください。最初にあなたのジュエリーを見たときに惹きつけられたのは、チェーンとシルバーのプレートの独特な組み合わせだったのですが、このシグネチャーともいえる組み合わせはどうやって思いついたのですか?

小さなチェーンが集まってくっついて、動きのある形を作っている、それが私のスタイルだと思っているのだけど、実はこのテクニックはちょっとしたミスが元になっているの。通常はロウ付けのときにロウ材がチェーンの方に流れてしまうとチェーンを固定してしまうから、そうならないように注意して作業をするものなんだけど、逆にチェーンとロウ材がくっついてしまったらどうなるだろうと思って、試してみたのね。そこから試行錯誤を経て独自のテクニックとして確立させたのよ。

__「こうしなくてはいけない」という考えを一度捨てたからこそ見つけられたテクニックなんですね。


__普段の製作プロセスはどんな感じでしょうか?

いろいろ試行錯誤しながらデザインを膨らませていくことが多いわね。実際に素材を触りながら、素材自身がどうしたいのかに耳を傾けながら、私はその手助けをするような感じよ。

__先程言っていた、チェーンとロウ材が付着してしまうのを自然に任せているというのとリンクしてきますね。

__では、番好きな工程は?

チェーンをロウ付けしてできた塊から、自分の作りたい形を切り出すところが一番好き。カオスのような塊の中から意図した形を浮かび上がらせる瞬間なの。

__お話を伺っていると、素材にある程度任せている部分とコントロールしている部分が対照的に見えてきます。たとえばチェーンやシルバーの形がとてもシャープで、この辺りはとてもコントロールされている印象ですが、いったいどうやって作られているのか、とても不思議です。

イメージしている形に特に決まりはないけれど、デザインしやすいようにいくつかルールを設けてはいるわ。たとえば、円形は出来るかぎり正円に、三角形のピースは同じ角度で統一させなくてはいけないし、チェーンは真っ直ぐに、または他の形に対して平行になっていなくてはいけないし、四角いピースの間隔は均一する、といったように。こういったルールに則って、フォルムはあくまでシンプルにすることで、デザイン自体軽やかな印象に、やりすぎ感がでないようにバランスに気を付けているわ。もちろん、自分で作ったルールを破ることだって楽しいのよ。私もしょっちゅう破っているから。

__そのおかげで独特なロウ付けのテクニックを生み出した訳ですものね。

__では、ジュエリーに使用されている真鍮について教えてください。

私のジュエリーに使われているブラス(真鍮)は全てビンテージのブラスチェーンなの。何十年も前に作られたまま、使われることもなく倉庫の隅に眠っていたもので、それを大量に買い取ってジュエリーとして甦らせることにしたの。

__真鍮は酸化や変色が起こりやすと思うのですが、どんな風に経年変化していくのですか?

このブラスチェーンには薬品を使ったさび止め加工はされていないという意味で"raw (生)"と呼ばれているの。ブラス(真鍮)は水分、空気、人の肌、熱など様々な物に反応する素材で、一旦酸化すると輝きが消えて、暗いアンティークのような色味に変わるのだけど、それを防ぐため薬品を使ったり、鍍金をかけたり、いろいろやってみた結果、このブラスの性質ごと楽しむのが一番いいのではと思うようになったわ。"raw"のままでとっても美しい金属だし、クリーニングしたければいつでもできるもの。

__あえて、変化を楽しんでほしいと。

__それでも変色が気になってしまう場合のお勧めのケア方法はありますか?

ブラスやシルバージュエリーの輝きを取り戻したいときには、お酢もしくはクエン酸(調理用)を環境に優しいお手入れ方法として勧めているわ。容器にどれかを注いで加熱してから、小さじ1杯の塩と、そこにジュエリーを入れて、たまに撹拌しながら数分間加熱して。そのあとジュエリーを取り出して水と石鹸ですすいでしっかり乾燥させるだけ。化学薬品に抵抗が無ければ、ホームセンターで手に入る真鍮とシルバー用の変色除去剤も使えるわよ。

__今後の展開や扱ってみたい素材があれば教えてください。

ゴールドが好きで、最近はブラスで作っているシリーズの小型のバージョンを14金、18金のチェーンで作ってみたりしているの。始まったばかりの試みだけど、やってみたいことが色々あって楽しみよ。

__あなたのジュエリーを身に着ける人に、どんな風に楽しんでもらいたいですか?

ジュエリーは全て一つ一つ私の手で作っているから、そのピースが出来上がるまでのプロセスや、素材の組み合わせのユニークさ、身に着けた時の動く様子などを楽しんでもらえたらと思っているわ。個性を大切にしている人、ジュエリーが表現できることを大切にしている人が身に着けてくれたら嬉しいわね。

ジュエリー制作を始めたきっかけなど、ハンナの自身の直感に対する迷いの無さに、ユニークなアプローチを確立できている鍵があるような気がしました。きっとこの先も自身で編み出したテクニックを高めていき、私たちを驚かせてくれるのでしょう。ハンナ・キーフのジュエリーの魅力を更に感じられた密度の高いインタビューが実現し、今回こうして彼女のジュエリーをご紹介できることを誇らしく感じています。是非多くの方に見ていただきたいジュエリーです。今回のご紹介が素敵な出会いになりますように。

Interview & Texts : 齊藤慶子
Special Thanks : Kristin Dickson Okuda (iko iko)