SOURCE objects

23

Love Token & Latin Inscription

Gabriella Kiss 2023.11.6

18世紀末から19世紀初頭の英国、この時代は社会的な制約により異なる階級の人々による恋愛は許されず、身分の壁を越えて愛する者たちは、その愛を隠す必要がありました。そんな秘密の愛を誓い合う手段として、愛する人の瞳だけを精巧に描き、さらにメッセージや装飾を施したLove’s Eye Ringが誕生しました。

ガブリエラはLove’s Eye Ringに秘めたロマンティックな物語にインスパイアを受けて、Love Token Ringをデザインしました。それらのリングは目の他に口、手、耳、鼻など身体の一部分をゴールドでリアルに表現し、さらにラテン語でメッセージを込めました。例えば、涙を流した瞳のリングには「NIL NISI CRUCE(苦しみなくして、何もなし)」と刻まれています。美しいフォルムと共にメッセージが込められたことで、現代の煌びやかなジュエリーとは一線を画し、何かお守りのような存在感を放っています。

Love Token Ringから派生したLatin Inscription Ringには、シンプルなフォルムに「CREARE(創造する)」、「CARPE DIEM(今を生きる)」、「AMICITIA(友情)」など、ラテン語でさまざまなメッセージが刻まれています。ラテン語は古代ローマから受け継がれた言語であり、現代ではほとんど用いられないため、その意味を理解することは難しく、歴史的な謎めいた雰囲気を漂わせています。それらのリングを身に着けることは、自分だけの決意や願いを常に身近に感じる機会となり、日々の生活でそっと励ましてくれる魔法の道具に思える瞬間があるでしょう。

1988年にブランドを立ち上げたガブリエラは、1990年からLove Token RingとLatin Inscription Ringの制作を始めました。これらのデザインは彼女のキャリアの初期から愛され続け、30年以上の歳月を経ても、私たちに特別なメッセージと美的な価値を提供し続けています。

Love Token Ring & Latin Inscription Ring
Gabriella Kiss


Text : 杉山慎治