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Kathleen Whitaker

Tiny Details, Big Differences 2019.3.11

現在、東京に滞在中のキャスリーン・ウィテカー(以下、キャスリーン)。昨年10月頃、ソウスからコラボレーションの話を持ちかけてみたところ、「私が実際日本に行って、そこで影響を受けながら何か作るのは面白そうじゃない?」と提案があり、今回の来日が実現した。3月の初め、目黒川近くにある建築家が設計した建物に滞在中のキャスリーンを訪問すると、コーヒーを淹れてくれるうちに自然と会話が始まった。




「ジュエリーを始めたのは、ニューヨークからロサンゼルスに引越してアートスクールに行きだしてからなの。新しい土地で出会った人たちが私のジュエリーを面白がってくれたり、ウェブサイトを作ってくれたり、雑誌で取り上げてくれたり、お店で取り扱ってくれたり、そうした人と人の繋がりから自然発生的にスタートしたのがKathleen Whitaker。時代の空気感もあったかな。ローカルであることや地産地消への意識の流れが強まり始めた時期でもあったから。」




__小さな幾何学モチーフの”Classic Collection”はブランドのスタートとなったアイテムで、ペアではなく1ピースから購入できることで様々な組み合わせを楽しめるシリーズ。ソウスで扱う様々な個性を持ったジュエリーの中でも、ジュエリーでありながらファッションの自由度を持ち合わせた、ひときわユニークな位置を確立している。

「“Classic Collection”が小さいピースなのも、1ピースで楽しめるようにしたのも、『だれもが好きなように着けて欲しい』って想いがベースにあるの。ピアスホールは左右一つずつって決まりがあるわけでもないし、ひとつだけの人、複数ある人、それに男性もいるでしょう。それぞれ同じバランス感・比率のもとで、形・サイズが違っても統一感が生まれる、キットのようなイメージで作ってるわ。
私はみんながKathleen Whitakerをどう自分らしく楽しんでくれているかに興味があって、『そんな風に着けてくれるんだ。面白い!いいね!』って驚かせてくれることを期待しているの。あと、常に思っているのは『あなたの事はあなたが一番よく知っているし、あなたがいいと思ったものがあなたにとってのベスト』ってこと。自己表現のツールとして、自由な楽しみ方をしてくれたら嬉しいわ。日本でも多くの方に楽しんで貰えていることに関しては、ディティールへのこだわりに共感してもらえたからじゃないかと思っているの。Spangle Earringはミリ単位でサイズ展開が7通りあって(ソウスでは6通り)、1ミリの差はとても小さく感じるかもしれないけど、私はその差にちゃんと意味を持たせているの。日本の皆さんはその小さな違いを大切にしてくれているように感じるわ。」




__2月の終わりから日本に滞在しているキャスリーン。見知らぬ土地に住むことは、今までと違った新しいものの見方を自分の中に発見できる貴重な機会ととらえているそう。

「この前タミゼに行った時、フランス製のアンティークビーズを買ったのね。それまでは見かけても気にも留めなかったものが、なぜかその時は心に響いたの。他にも、21_21で開催された民藝展やPetit Cul、YAECAでも同じようなことがあったわ。今、日本的美意識を通してそのフィルター越しに物事を見つめたとき、日本に来る前とでは同じものに対しての私の見方、感じ方が変わってきている気がするの。今はそれを楽しんでいるところかな。知らない場所で、実際にその土地の空気を吸って水を飲んで言葉を聞いて・・・。そうすることでしか自分の中に新しい化学反応は起こせないから、今回の滞在中はたくさんのものを見たいし、タミゼでの出来事みたいなことがどんどん起きてくれるといいなと思っているの。」

__現在、キャスリーンが新たなチャレンジとして精力的に製作している一点物のシリーズは、金属のみで作られた”Classic Collection”、天然石をダイナミックに削り出した”Rock Collection”に続く、”Stone Collection”。天然石の大胆さとゴールドの繊細さの組み合わせが独特な造形を作り出し、この世に二つとないピースとなっている。

「Stone Collectionは前述の二つのコレクション両方の流れを汲んでいて、ゴールドの直線的な形と、天然石の自由な形のコントラストにフォーカスしているの。それぞれの素材をテーブルの上に広げ、それらの形や癖を見ながら、組み合わせてシュミレーションして作り上げているのよ。」

__確かにStone Collectionのひとつずつ切り出された石や貝と、キャスリーンの作り出したゴールドのパーツの組み合わせそれぞれが、どこか異質のもの同士がそっと寄り添いあって不思議な一体感を生み出しているような印象を受けた。途中、キャスリーンがStone Collectionのピースの写真を見せてくれて、「これをミシェル・オバマが着けてくれたのよ。」と嬉しそうに話してくれたのが印象的だった。




彼女と一緒に時間を過ごしていると、本当にディティールに気を配る人だという印象を受ける。それはジュエリーに対してだけではなく、物や人、周りのすべてに対して細やかな心配りを自然にしているといった感じだ。撮影の際に照明に気を使ってくれたり、嵌めていたリングについてのごく個人的なエピソードを覚えていてくれたり、帰り際に羽織ったジャケットを褒めてくれたり。そして興味を持ったことに対して、躊躇せずに飛び込む大胆さはブランドスタート時から続いていて、今回の日本滞在のプロジェクトはまさにそれを反映しているのだと感じた。ミニマルでロジカルな思考や細やかな心配りなど、キャスリーン自身の人となりが彼女の作るものすべてに映し出されていることに触れ、ますます彼女のジュエリーに愛着が湧く、とても有意義な時間となった。


今回の滞在は3月いっぱいまでの予定。そして、ソウスとのコラボレーションは動きはじめている。キャスリーンの目に映る日本がどんなプロセスを経てどんな形に昇華するのか、また今後のStone Collectionの展開にも期待が膨らんでいる。いずれこちらでもご紹介したいと思っているので、どうぞお楽しみに。


Interview & Text : 齊藤慶子・杉山慎治