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Interview - Tembea

Mini Zip and Mini Zip Mini 2021.8.22

スワヒリ語で「放浪」を意味するバッグブランドの『TEMBEA』。バゲット、本、おもちゃなど、入れる物や用途が決まったバッグを提案しています。昨シーズンよりSOURCEでもお取り扱いが始まったMINI ZIPの再入荷とMINI ZIP MINIの新入荷を機にTEMBEAのデザイナー、早崎さんにお話しをお伺いしました。

杉山(以下S)___もともとこのバゲットトートが始まりですよね、それがいつ頃ですか。

早崎さん(以下H)___2004年からバケットトートの販売をスタートしました。始めは、洋服を中心に作っていて、バッグはラインナップのひとつだったんです。それでちょっとずつ洋服とバッグの比率が変わっていったんだけど2007年くらいにバッグの形が増えていったときにコンセプトが出来上がりました。それくらいに杉山さんと出会いましたよね。

S___そうですね、そのくらいでしたね。懐かしいです。確かに最初は洋服の印象が強かったです。バッグを作り始めたのはどういう経緯からなんですか。

H___さかのぼると、前の会社に勤めていた20代のとき、財布と携帯と鍵だけをポケットに突っ込んでみたいな生活をしていて、いざ自分で独立して、仕事を始めて、カバンがいるなってなった時に自分が使いたいものがなかったんです。だから自分が欲しいものを作った感じですね。

S___自分の中のこういうものが欲しい、あったらいいなっていうことの解決策としてものづくりをしているんですね。

H___そうですね。世の中にないっていうのもポイントで、今でもその感覚を出来るだけ忘れないようにしています。だから比較的変な形というか、見た事の無い形が多いのかもしれませんね。

S___ちょっとニッチなものから始まり、それに共感してくれる人がいて口コミで広がっていった感じですね。
キャンバスのアイテムを長らく作り続けて、今は革やナイロンなどもあるじゃないですか。それも何となくこういうものがあったらいいなっていうところからのスタートなんですか。

H___キャンバス以外に気に入った素材を探すというよりは、自然に何となく頭の中に入ってくるもの、使いたいなと思うものを広げていくんだけど、そこでも前に話したとおり、他にはないものを選ぶようにしています。いわゆるふつうのナイロンぽいものは使っていないし、レザーもTEMBEAらしいレザーをずっと探していました。最初はレザーでやりたいけど、レザーの知識がないからとりあえず、何となくこうかなっていうサンプルを買ってみて、あぁでもない、こうでもないって繰り返し作り続けました。納得いくこの形(MINI ZIP)になるのに、10年くらいかかりました。

S___なるほど。色々と試行錯誤されたんですね。そもそもMINI ZIPはどんな感じで作り始めたんですか。

H___自分は仕切りがいっぱいあったり、ポケットがいっぱいあるのはもともと使いこなせなくて。もう全部バッと放り込んで探す、みたいな方が性分に合っているというか、きれいに分けてもどこ行ったか分からなくなるんですよ。トートの良さもやっぱりガサッと入れて、なんなら物がどっかにいっちゃうくらいの可愛げみたいなところが好きなんです。便利なものだけがいいものではないって思ってて、不便なものへの愛着感もありますね。お財布でも同じように考えました。でも苦労しましたね。

S___愛着感、そう言われるとそれがTEMBEAのアイテムに共通するキーワードですね。でも、バックと違って、お財布はどうしても入れるものが決まっているし、ざっくりしたものを財布に落とし込むのが難しそうですよね。
教えてもらったお札を一番外側のポケットふたつを使って貫通させる入れ方、とても面白いですよね。

H___このお札の入れ方はあとで気づいたんですよ。あるとき触っていたら、ここつながっている!って気づいて差し込んでみたらお札のサイズも丁度で。最初使うと、ちょっとした難しさはあるけど慣れると結構便利です。折って入れるより明らかに使い勝手がいい。お札が1枚入っていると、滑るからさらに楽です。あとは小銭もお財布の中で重要なポイントですね。小銭を取り出しにくいお財布って小銭がどんどん溜まっていっちゃうじゃないですか。これは浅いから見やすくて取り出しやすいんです。収納力もあってお札も取り出しやすくて、結果的にすごいいいものが出来たと思っています。いろいろなお財布を作っていますが、自分的にはこれが一番使いやすいです。

S___はじめてこれを見せてもらった時に確かにお財布にしてもいいけれど、ジュエリー用のポーチとしても使えそうだし、他にもリップとかお薬とか、用途を限定しないってのもいいかなぁと思ったんですよね。使う人に用途をゆだねるのも面白いかなと。丁度僕たちのお店でお買い物をしていただいた際にお付けしているポーチがあるんですけど、それがピタリと入ったのもこれを扱わせてもらいたいと思った決め手です。

H___もともとTEMBEAのコンセプトがバゲットとか、本とか用途を決めて使うっていうコンセプトなんだけど、実はそれにしか使えないものは作っていないんですよ。むしろその逆で、使う人によって何とでも使えるみたいな余白をかなり残しているものを作っているというか。そういう意味では用途を限定しているものを作りつつも、実は汎用性が高いんです。だから財布だけじゃない用途にも使えるんだと思います。

S___SOURCEでは牛革のオレンジとグレー、カプチーノの3色を選んで作ってもらっていますが、TEMBEAでは扱っていない色ってあるんですか。

H___TEMBEAではシーズン性を出すために色は毎回変えるようにしています。このオレンジとグレーの2色はこの秋から流通するアイテムとしてあります。カプチーノはなんとなくSOURCEのイメージが自分の中でもあるからTEMBEAではやらないでおこうかなって思って。

S___確かに、前回はカプチーノがすごく人気でした。

S___早崎さんが実際に使用しているのはヌメ革のものですよね。味が出ていますね。これで何年くらい使われたんですか。

H___これは2年くらいですね。味が出たし、ちょっと入れ過ぎて形が変形してきちゃいました。だいぶ使っているのでテカテカもしていますよね。ヌメ革は硬いけど伸びるんですよ。

S___僕らが選んだ革はどんな特徴があるんですか。

H___SOURCEの牛革はあんまり変化しないのが特徴ですね。表面に塗料を塗っているような感じなんで、革自体の色と表面の色が微妙に違うんですよ。この模様も型押しで、こういう型をプレスして着けていて、シワも均一です。張りがあって、そんなにはげたりもないです。

S___綺麗に使い続けられそうな素材ですね。
この前、友人の誕生日だったんで、オレンジのMini Zipを贈り物にしたんですよ。お財布がコンパクトになったって、喜んでもらえてます!末永く愛用してもらえると嬉しいですね。

早崎さん、今回はいろいろなお話を聞かせてもらい、ありがとうございました。